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【薬局】専門性を活かして在宅医療にかかわる薬局薬剤師。

更新日:2月13日

薬学部卒業後の進路


掛谷 雅之さん

有限会社沖勘六薬局

地域連携・在宅医療推進部係長

地域薬学ケア専門薬剤師(がん)


 掛谷雅之さんは、薬学部の病院実習で入院期間の短縮化が進む病院の現状を知り、長く一人の患者さんにかかわることができる薬局を就職先に選んだ。

 最初の薬局に一年勤めた時点で、「薬局の新規立ち上げにつき管理薬剤師として来てほしい」と請われ転職した。そこは処方箋の90%をクリニックから応需する薬局で、医師との面談、卸とのやり取りなど、前の薬局より担当する業務の幅は広がった。しかし、売り上げの数字を見る立場となったことでコストについて考える機会が増え、事務職でもできる薬剤管理中心の業務内容に疑問を抱くようになった。

 ちょうどその頃、厚生労働省が将来に向けた薬局再編の姿を示すべく「患者のための薬局ビジョン」(2015年)を打ち出した。その中では、健康サポートや地域包括ケアシステムへの貢献といったこれからの薬局の役割、かかりつけ薬剤師・薬局機能の明確化がうたわれていた。

 掛谷さんが薬局への就職を決めたきっかけの一つに薬局実習で薬剤師が在宅医療にかかわる姿を見ていたこともあったため、在宅医療に注力している現在の会社に転職することにしたという。


薬学的観点で医師と協働し、よりよい薬物治療を目指す


 現在、掛谷さんは会社の在宅医療部門の責任者を担っている。処方依頼の内容は複数科にまたがるた

め、さまざまな薬剤の相互作用や患者さんの検査値データをもれなく把握する必要がある。訪問先では処方薬の説明、バイタルチェック(脈拍、呼吸、体温、血圧)、酸素飽和度の測定、残薬チェックなどを行い、薬局で報告書にまとめ依頼先に送付している。

 掛谷さんは、がんの知識を持った薬剤師に与えられる「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」の資格を持っているため、患者さんは抗がん剤による薬物治療中の人やがん末期の人が多い。患者さんがどういうがん腫で、これまでどのような治療がなされてきていて、そのがんではどのような経過をたどるケースが多いのかなど、専門的知識を持って介入することで、がん患者さんの在宅療養の質向上に努めている。

 治療薬の副作用や医療用麻薬の効果のモニタリングも大切な役割の一つだ。処方内容が患者さんの状態にマッチしていないとQOL(生活の質)が低下するため、担当医師に対し処方内容の変更を提案する場合もある。掛谷さんは言う。

 「がん治療では、時にはガイドラインに準拠しない治療が必要な場合もあります。そのことも踏まえ、薬学的な観点からガイドラインや添付文書の内容と患者さんの病態を総合的に照らし合わせて医師に提案し、意見の擦り合わせを行っています」



後進に自らの学びを伝え、在宅医療の進歩に貢献したい


 掛谷さんは「在宅医療は多職種連携の最たるもの」と話す。

 「患者さんに薬局に来ていただくだけではわからない情報が数多くあります。在宅医療にかかわる薬剤師は、患者さんのご自宅や施設へと自ら情報を取りにいく必要があります。そうしなければ、医師や看護師、ケアマネジャー、施設のスタッフなどの他職種と対等に話すことができません。受け身ではない積極的な姿勢が求められると思います」

 掛谷さんは、今後の目標として「がん専門の薬剤師としての知見を現場に還元すること」を挙げた。

 「5年前の自分より今の自分のほうが、同じ症状の患者さんに的確な指導ができると思います。私の最新の知見を新人薬剤師たちに伝えれば、その新人は5年前の私と同じレベルからでなく、5年分進んだところから新たな知見を積み重ねていくことができます。個々の学びを他の薬剤師たちが共有することで、患者さんにはレベルの高い薬物治療を提供できます。そういった学びの場を充実させていきたいと思います」



 

Profile

掛谷 雅之さん

有限会社沖勘六薬局

地域連携・在宅医療推進部係長

地域薬学ケア専門薬剤師(がん)

2014年薬学部を卒業後、薬局に就職、その後2回の転職を経て現職。以前は、休日になると仕事でかかわりのある医師と連れ立ってゴルフにいくことが多かった。2022年7月に子供が誕生してからは、休日はもっぱら子育てに費やす。今は、子供の成長を見ることが仕事の活力につながっているという。

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